STORY OF "BLUE KNIGHTS"
参考資料「第1次MUCOC戦役」(First MUCOC War)について
(シリーズ2作目「BLUE KNIGHTS」より抜粋、加筆修正したもの)

オペレーション・ウィンドストーム

 この時代、大陸間弾道弾(ICBM)などの大型戦略兵器は、レーザー兵器等を搭載した迎撃用軍事衛星の実用化やECM技術の発達により、もはや以前のような絶対的な抑止力とは成り得ず、再び通常兵器の行使が戦争の遂行手段となっていた。

 24世紀初頭に端を発する軍事企業組織「MUCOC」と「I.U.T.O.」(以下、統合軍)による地域紛争は、前面戦争と呼べるほど大規模なものに発展していた。

 事の発端は、とある大規模なクーデター未遂事件をMUCOCが裏から支援していたことが明るみになった事だった。この事から各国政府はMUCOCの存在を危険視し、組織の解体を要求した。しかしMUCOC側は全面的に関与を否認、国家権力による民間組織への不当な弾圧であると反発を強め、幾度かの交渉も平行線のまま終わった。このため、各国政府はMUCOCに対する制裁措置を協議していた。

国家対企業というこの対立の裏には、国家や国境の存在自体がもはや無意味であり、これからはメディアやネットワークを管理する大企業が政治の主導権を握るべきという企業組織の強い主張があった。これは地球規模のネットワークの発達と汚職の横行する腐敗した国家体制に対する民衆の不信感、それに起因する国家政策を無視した形での民間レベルの国際交流や経済交流が盛んに行われるようになっていた為である。
また一部の国では頻発するテロ活動への対策を国家予算で支えきれず、軍事企業に開発・生産のみならず運用まで委託するという形で軍事力の民間へのシフトが進んでいた。その結果「平和を守るのは国家ではなく企業」という認識が一般市民の間にも広がり始めていた。(もちろんこれは各種メディアを駆使した企業によるプロパガンダの影響もある)

 MUCOCからの奇襲攻撃があったのは、そんな矢先のことであった。それに先立ちMUCOCはその技術力を駆使して各種民間ネットワーク網を掌握、市民には「国家権力の不当な武力行使に対する自衛措置」という形で伝えられた。

 突然の急襲により、次々と軍事拠点を制圧された各国は統合軍を結成、これに対抗しようとした。MUCOCの攻撃に対して統合軍側は直ちに鎮圧部隊を送り込むが、テクノロジーに優るMUCOC戦闘部隊により多大な損害を出すこととなった。

  そして、戦局はMUCOC陣営が優勢なまま1年の時が流れた。

 未知のテクノロジーを駆使して前線に新兵器を投入してくるMUCOC側に対して戦線の後退を余儀なくされていた統合軍側は、数少ない反MUCOC企業であるサファイアル・エアロスペース社の協力の下独自に開発した虎の子の航空機動部隊とともに、新型戦闘機の実戦投入を決定した。

ここに、統合軍の起死回生の反攻作戦「オペレーション・ウィンドストーム」が発動される。

 そして朝焼けの中、統合軍の誇る航空機動部隊のフィンベル級強襲戦闘母艦は、新鋭戦闘機部隊を載せて次々と離陸していった・・・。



※「MUCOC」(ミューコック・MUltinational COmpanys Community = 多国籍企業共同体)
 「I.U.T.O.」(International Unification Treaty Organization = 国際統合条約機構)